活動報告

駒ヶ根の明日を語る会

交流人口を増やす

第6回12月16日(月)18時~20時

駒ケ根駅前アルパ3階多目的ホール)

タレント:大桃美代子さん

「駒ケ根の明日を語る会」(代表・伊藤祐三前共同通信論説委員)は「等身大で行う地域づくり」をテーマに地域づくり連続講座第6回を12月16日、駒ケ根駅前のアルパ3階多目的ホールで開きました。ゲストにタレントで、代表の伊藤とともに「地域再生大賞」の選考委員を務めた大桃美代子さんが登場。中越地震で実家が被災し復興のために古代米づくりに取り組んできた体験や、選考委員として見て来た各地の地域づくりの取り組みを紹介。地域の資源をさまざまな角度から見直し、磨くことの大切さを訴えました。

 

☆大桃美代子さん
新潟の食糧農業大学で客員教授をさせていただいたりしています。(代表の)伊藤祐三さんと一緒にお仕事をさせていただきました中で、地域おこしの現場を見させていただきました。そこで感じたこと、見たことの事例をご紹介させていただきます。私の地域づくりの話は難しくはありません。リラックスして聞いていだきたいです。

大桃美代子さんの講演に多くの方が熱心に耳を傾けた (12月16日、アルパで)

地域活性化ということで、いろいろな所に行って、地域の話を聞いています。なぜこういうことになったのかというと、祐三さんと知り合いになり、47都道府県の地方新聞社と共同通信社が地域で頑張っている団体を表彰する「地域再生大賞」の選考委員として視察に行きまして、お話を聞いて地域起こしを見させていただく仕事を始めて10年になりました。地域おこしを頑張っている人達は、この中にもいるかと思いますが、もうやめようかな、つらいなあと思ったことは何度もあるんです。その取り組みが素晴らしいと賞を贈ったり、受賞された人と話したりすると、頑張ろうかなと力が湧いてくるのです。
大賞の賞金は100万円です。各新聞社が推薦し、いろいろな団体が受賞しました。空き家対策や少子高齢化への対応など様々でした。阪神淡路大震災の時に外国人の方に情報が届きにくかったことを教訓に、外国人が病院に行った時に状況を伝えるために、通信を使って遠隔で通訳をする活動や、多言語でパンフレットを作っている団体もありました。これから日本がいろんな外国人を受け入れる時にどんなことが必要になるのかを考えると、良いモデルケースになると思います。受賞団体の活動は、日本の問題の縮図のように思えます。

 

▽被災し壊れていく古里にがく然

 

なぜ、この賞に関わるようになったのかというと、中越地震がきっかけです。2004年10月、出身の新潟県魚沼市などで起きた大きな地震でした。当時、月曜から金曜まで朝のテレビ番組をやり、午後は違うテレビ局で働き、土曜、日曜は地方でシンポジウムや講演会をしていました。その日は土曜で新潟にいて大きな揺れを受けました。そして、地域が壊れていく姿にがく然としました。今までは自分の故郷は変わらないもので、いやされるなあと思っていました。この地震で自分の中の物差しというのか、アイデンティティーが壊れてしまったように感じ、これからどうなるのだろうかと混乱しました。東京に帰っても地震のニュースは何度も取り上げられていましたが、3か月たち、半年たち、一年たつと余り話題に上らなくなりました。これは地元で頑張らないとだめだと思ったんです。地元の復興って何だろうと考えたんです。思いついたのがお米づくりです。実家は兼業農家です。始めたら、物づくりは大変だなと思いました。私のおコメは黒い古代米なので、白いおコメと混ぜて炊くとピンク色になります。お赤飯のようになると言われています。雑誌にも紹介され、購入することもできます。そんなに高くないです。食物繊維も入っていて、とてもおいしいおコメです。
黒いおコメは大変だったんです。どこが大変かというと、この中におコメつくりをしている方はいっらしゃいますか。意外といないんですね。白いおコメに黒いおコメが混じると等級が下がります。黒いおコメを作るっていったら、周りが大反対なんです。反対されて、一人で始めるしかないと思いました。トラクターや田植え機、草刈機、コンバイン、乾燥機まで使わなくてはならず、車庫も必要になったんです。それやこれやで、始めるだけで1000万円以上の出費になりました。今でも大赤字ですけど、子供たちや協力してくれる方もいて、やめるわけには行かないんです。今は新潟に移し、農業法人に管理をしていただいています。新幹線で通って自分でやってみたんですが、余りに大変でした。でも「いいなあ」と思ったのは、東京のテレビ局で晴れか雨か、寒かったのか暑かったのかわからない状態で仕事をしていても、新幹線を降りた瞬間に寒いとか、においを感じるんですね。「ああ、帰ってきた」と。ずっと東京人間だと思っていたんですけどね。やっぱり地域の土に触ると安心感につながるなあと思いました。
やってるうちに地域のことを少し知ることができました。この活動を義捐金にしたいということで始め、今は子供たちの食育につなげ、今年で10年になります。東日本大震災が起き、福島県のある小さな町から「大桃さん、中越地震の復興の経験を生かし力を貸してください」と言われたんです。小学校や行政、地元グループと一緒におコメを作っています。値段を上げるには安全性を上げることだと考え、カブトエビを使った農法をやろうということになったんです。カブトエビは雑草を食べてくれるので無農薬栽培ができるはずと始めたんですよ。ただ、うまくいっていません。なぜかというと、カブトエビの天敵はカエル。カブトエビが育つ前にオタマジャクシがカエルになって、カブトエビの子どもを食べちゃうんです。でも、あきらめません。私たちが卵をまいていないのに、カブトエビがたくさんいる田んぼがあるんです。その土を持ってきて一緒にやってみようということになったんてす。あきらめなければ失敗ではないという言葉がありますが、続けることが成功への過程だと信じてやっています。もし、どこかで、このコメを目にしたら、あの農法がここまできたかと思っていただけたらと思います。
▽10年、20年のスパンで地域おこしを
さて、地域起こしの実例をご紹介したいと思います。沖縄の島ですが、増えて来た空き家をイノベーションし一棟貸しをしています。1泊15000円という値段ですが、ファミリーやお友達と8人位で泊まれますので、割安です。ご飯はどうするかというと、折角ですから沖縄の料理を食べたいですよね。

さまざまな角度から地域資源を見直すことが大事だと話す大桃美代子さん(12月16日、アルパで)

「郷土料理を」と言うと、「わかりました。一人2500円です」と、おばあたちが料理を作ってくれるんです。豚肉料理やチャンプルー、漬物などが出てきます。「沖縄の気分を味わったら」というと手踊りもありますし、太鼓や三線などもあり、沖縄気分満載なんですね。地域の方が演奏するとバイト代になります。すごく印象的だったのが「島起こしは島残しだ」という言葉でした。今あるものを使って、もっと魅力的に見せる。多くの人に知ってもらう。それが島起こしなんだ。これはすごく重要だと思いました。
そして、もう一つは有名なんですけど、徳島県の上勝町。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、葉っぱビジネスで有名な所です。日本料理では、天ぷらにモミジの葉をつけたり、柿の葉にお豆腐が乗せたりと、きれいな飾り付けをしますけど、そうしたつまものを販売している会社です。発案者は元の農協職員で、お料理を食べている時に、これはいいビジネスになるのではないかと思いついたんです。
農家に「葉っぱビジネスを始めてみないか」と言った時は、すごく怪しまれて「葉っぱを売ってお金にするなんて、おれたちはタヌキじゃない」と言われてしまいました。
そこで「葉っぱを売って、ハワイに行こう」というキャッチフレーズをつけたんです。葉っぱというと、山にある葉っぱを思い浮かべるかもしれません。でも、売り物にするには大変です。赤い葉ごとに10枚とか20枚を一箱にしたり、ハの字型にきれいに並べたりするんです。注文システムもすごいんです。ある料亭が3日後に100人の大きな宴会があり、同じ種類で大きさも同じ葉が100枚欲しいという注文が来ます。同じものを同じように出さなくてはいけない。それができると一枚15円の葉が40円になります。こうした取引をパソコンで伝え、70代位の女性たちが使いこなしているんですよ。注文が入ったら、早押しでみなさんどんどん取っていきます。仕分けし計量し詰めていくんです。葉っぱビジネスは結構稼ぐと聞いていますが、おばあちゃんが年間100万円取れたらうれしいですよね。子どもに小遣いをあげられます。1500万円も稼いでいる人もいます。なぜ、こんなことができるのでしょうか。畑があるからです。見せてらいましたが、階段がついているんです。階段からすぐ葉っぱが取れるようになっていて、高さを決めてあるんです。それだけではなくて、青い葉っぱ、赤い葉っぱ、黄色の葉っぱとそろえているんです。ハウスで作っている人もいて、盗りやすい高さに合わせています。色を変えるために木に布団を巻き温めて、何種類もの葉っぱを出す方もいました。でもそれだけでは1500万円は行きません、自分ひとりではだめだ。もっと稼ごうと思った時、隣家のおばあちゃんを雇用したんです。仲間を増やすことで1500万円になったんです。一人7万円位の料亭にも勉強のためにみんなで行くと言っていました。
上勝町は、もう一つ有名なシンボルがあります。ゴミゼロステーションです。焼却場を作らないで、みんなで選別することを選んだんです。47種類に分別するんですが、どうやってやるのかと、視察がすごく増えたんです。葉っぱビジネスとゴミゼロステーションの視察で毎日3台以上のバスが来て、視察受け入れがビジネスとして成り立つようになりました。泊まる所が必要だということで、健康センターが使われ、若い人の雇用の場ができました。おしゃれなお店もできました。駒ヶ根に来て思ったんですが、おしゃれなお店がないんです。おしゃれな店の周りにはカフェができるようになりました。視察を受け入れていたら、会社の研修も舞い込みました。おばあちゃんと研修すると、みんな優しくなるんですね。学生のインターンも受け入れて。研修ビジネスはなかなかすごいんですよ。こうしてビジネスがどんどん違う展開になっていった。葉っぱのようなスターが生まれると、地域の認知が高まると広がりが生まれてくるんですね。
駒ヶ根でもできると思う方がいらっしゃるかもしれませんが、ただ、このビジネスは時間がかかってます。木は育てるのが大変です。ビジネス化するのに30年かかります。地域おこしは1年、2年ではできないです。10年スパン、20年スパンで、やっと一つの街ができる。それが大きな力になるものだなと思います。
もう一つ紹介したいのが、愛媛県の中島です。この講座で、団体の代表の田中佑樹さんが駒ケ根で講演しましたので、ちょっとだけ紹介しますね。中島はミカンの島です。ちょっと衰退してきていますが、田中さんは東京に住んでいたんですが、お子さんをきれいな空気の所で育てたいと中島に行かれました。SNSで「今日はこんなタイが釣れました」などと発信していると、若い人たちが「楽しそう」と移住してきたというんです。5年で50人以上の移住者がやって来ました。最近では高齢のカップルも来るようになったんです。

ゲストの大桃美代子さんを紹介する代表の伊藤祐三・前共同通信論説委員(左)=12月16日、アルパ

今問題になったのがイノシシです。ミカンを食べて木をダメにしてしまうといい、撃ったりわなをかけたりするために若い人たちが必要なんです。イノシシをジビエ化して肉を売る事業をやるといっていました。中島で感じたことですが、生きにくさを感じている若者というのは、都会にいっぱいいますよね。受け入れてもらえる居場所づくりをすれば、その人達の移住につながっていく。中島には職もあるというんです。ハローワークに乗らないような、細かな仕事でも意外とお金になるそうです。若い人の力が求められていて、介護や家を片づけるとかで暮らしていけるんですよ
町ゼミってご存知ですか。例えば金物屋さんだったら、刃物の研ぎ方を教えますという講座をほぼ無料で行い店のファンになってもらう。ファンづくりのための商店街の活動ですが、30%位はリピーターでまた来るんです。店主と知り合いになって通ううちに、ここで買おうということになります。物があふれているので誰から買うかが重要になってきます。包丁を買うなら、あの人からということにならないと、商店街は生きていけませんよということです。

 

 

▽地域の魅力をどう伝えるかが課題

 

新潟市の沼垂という商店街の活性化で準大賞になった例もあります。おしゃれなお店もありますが、錆びたシャッターがいっぱいある場所に、週末若者たちがやって来ます。この景色が、若い人たちには昭和レトロだというんです。写真を撮るといい感じになり、インスタから火がついて、大人気になっているんです。お店も個性的で、姉と弟2人が市場の倉庫みたいな所を買い取って、どんなお店を入れるかを自分たちで決めているんです。トンボ玉を作る所だとか面白いお店が多いんですね。
今日私、駒ヶ岳へロープウエーで行きました。素晴らしいですね、景色が。千畳敷カールを見て感心したんですけど、これはスイスだなと思ったんです。スイスに行った時、本当にこんな感じでした。カフェがあって素敵だなと思いました。ソースかつ丼も食べましたが、ボリュームがあっておいしかったです。いい例がありました。星野リゾートトマムをご存知でしょうか。星野リゾートが復活させした。何が良かったかというと雲海です。雲海が人を呼んだということなんです。冬はスキーで人が来ますが、夏は来ない。メンテナンスの人が「この雲海を皆さんに見せたいな」という一言がきっかけになって、雲海ツアーに火がついて、朝5時からバスが大行列。6月ですけど、上はすごく寒いんです。雲海が見られなくても見た気持ちになれるように、青いソーダに綿菓子が乗っかっている雲海ジュースもあります。雲海の朝食もあります。おかゆにドライアイスのような湯気を掛けるんです。その湯気が雲海に見立てるというんですね。
星野リゾートのすごい所は毎週、魅力会議をやるんです。会議して、うちの魅力はこれですというんです。どうですか、こちらの魅力はなんですか、皆さん、こちらの魅力を私に教えてください。なんにもないではないでしょう。よく見てください。駅があるではないですか。これだけでも素晴らしいですよ。これは資産なんだ、財産なんだと思って、考えてください。てっぺんをみるのではなくて、暮らしを見ましょう。今日、ロープウエイを登ってわくわくしましたけど、同じようなことできると思います。星野リゾートより景色はいいです。だってあんなにきれいなんですもの。どうしたら伝えたらいいのか、魅力を磨くとはそういうようなことなんです。いろんな角度から「これが魅力なんです」というのを、みんなで持ち上げるのが魅力を磨くことです。活動してきた祐三さんなので、色々なことをご存じだと思います。ぜひ、この街で、そしてこの街がどんどん素敵になることを期待しています。

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